でも今、鉄瓶の良さが再認識されつつあります。理由は、”必要とされる本当に良いものは、時代を超えて受け継がれる”といったところにあると思いますが、その要素として鉄瓶が持つ鉄地肌の美しさや独特なデザイン、鉄器ならではのまろやかな湯を得られるといった実用性に焦点が当てられているようです。
たしかに、鉄瓶には独特の存在感というものがあり、特に使い込まれたものなどでは使われた年月そのものが鉄瓶の味わい(表面のさびの具合や色合い、また内側の湯あか)となって現れている点が、単に古ぼけた道具にしてしまわない大きな要因であると思います。
もともとが茶道具であった茶釜に起源をおく道具なので、茶道で重要となる「わびさび」の心と通じる部分が、そういったところに得も言われぬ良さを感じさせるのかもしれません。時代劇などで見かける欅の長火鉢にかかった鉄瓶なども、何故か郷愁をさそわれます。鉄瓶から立ち上る湯気を見ているだけで、幸せな気分にもなります。
理由はともあれ、鉄瓶には人の心を惹き付ける特別な何かがあることは、間違いありません。